医療法人社団息栖会 あきら医院 大野原 神栖市 茨城県 内科 胃腸内科 小児科 心療内科

漢方のおはなし

漢方の診断と治療

漢方的治療を行うには、漢方的診察をします。漢方は「証(しょう)」で診断し、「証」によって治療法を決めます。「証」とはそのひとが現時点で表している症状を、「気血水(きけつすい)」「陰陽(いんよう)」「虚実(きょじつ)」「寒熱(かんねつ)」「表裏(ヒョウリ)」などの基本概念をとおして、認識するものです。さらに病態の特異性を示す症候をとらえた結果を総合して、診断、治療します。
 

症状と処方

同じ病気でも、病期(症状の時期)により症状が異なるため、漢方薬ではそのときに現れている症状と体質にあった処方をします。 風邪を例にとると、ひきはじめの「寒気、頭痛、首筋のはり」の症状、徐々に「発熱、発汗、のどの痛み、はなみず、倦怠感」などというように変化して、さらに回復期となります。中にはこじらせて長引いていることもあります。 それぞれの病期と症状によってそのときに合った処方がされます。
 

漢方薬と民間薬の違い

・漢方薬
自然界に存在する天然物、たとえば、草根木皮、動物、鉱物などを原料としたものを生薬とよびます。その生薬を原則2種類以上組み合わせて処方されるものを漢方薬といいます。 使用する分量は漢方医学に基づいて決められています。 医師による処方のみ健康保険が適用されます。(一部適用外もあります)風邪に用いられる葛根湯は7種類の生薬を配合してあります。 現在は生薬を煎じることは少なくなり、主にエキス顆粒が処方されています。

・民間薬
概ね1種類の薬草で、使い方に細かい基準はなく経験的に言い伝えられてきた方法で使われるものです。 ドクダミやゲンノショウコなどです。
 

速効性と遅効性

漢方薬は2~3ヵ月のまなければ効かない、と思われがちですが、急性期にすぐに効くもの(速効性)と慢性期にゆっくり効いてくるもの(遅効性) があり次のようにわけられます。

・速効性のもの
一般によく知られているのは「葛根湯」や「芍薬甘草湯」です。一言でいうと、 葛根湯は汗を出して熱を下げる作用があり、風邪の初期に使います。芍薬甘草湯は筋肉の痙攣や腹痛などに使います。

・遅効性のもの
坐骨神経痛や、生理不順、更年期障害など、長期にわたり服用することで徐々に痛みや体質が改善されていくものです。
 

副作用について

漢方薬には副作用がないと思われている方も多いようです。漢方薬は数種類の生薬(自然物)からなるものなので、 西洋薬のように薬害としてあらわれる副作用は厳密にはありません。しかし一般に食されている野菜、魚介類、果実類などで 「胃がもたれる」「じんましんが出る」「下痢をする」と言った症状が現れるのと同様に漢方薬の一部の生薬が体や体質に合わないこともあります。
 

素人判断をしないこと

「漢方薬だから心配ない」と安易に考え、体質を無視し、症状だけで自己判断し服用すると、 腹痛、頭痛、下痢、倦怠感、食欲がなくなるなどの症状が現れることがあります。 その病気や病期の症状にあった処方でなければ、効果がないことがあり、体を温める作用や冷やす作用など逆の結果を招くことにもあります。これは副作用ではなく誤治(誤った使い方)による反応です。 漢方薬の服用にあたっては、そのかたの証が大きく影響します。必ず、医師、薬剤師に相談し指示(服用方法)を守ってください。
 

漢方薬には煎じ薬、エキス顆粒、丸薬があります。

・煎じ薬・自動煎じ機
煎じ薬は、その名のとおり生薬を煎じて服用するものです。
坐骨神経痛に処方されるソケイカッケツトウは23種類の生薬が調合されています。
一般的には600ccの水に生薬一日分をいれ半量まで煮詰めそれを朝夕の空腹時に 2回に分けてのみます。

自動煎じ機で簡単に煎じることができますが、漢方専門の薬局によっては大型の高圧煎じ機(漢方薬自動包装機)で煎じそれを1回分ずつパック詰めしたものもあります。

  

・エキス顆粒
エキス顆粒は、工場の大きな釜で煎じて抽出した煎じ液を濃縮加工し、スプレードライ工程という特殊な方法で顆粒状にしたものです。 忙しくて煎じる時間がないかたや生薬の臭いや味が気になるかたはエキス顆粒が便利です。インスタントコーヒーのように湯に溶かしてのみます。
薬の効果は煎じ液、顆粒状とも同じですが煎じ液のほうが若干吸収が良いと 考えられています。


 

・丸薬
丸薬は生薬を粉末にして、蜂蜜などで固め丸めたものです。
ケイシブクリョウガンは、1800年以上前に書かれた「金匱要略」 の原典どおりに 製造されています。
(これは保険適用外です。)

漢方の処方

漢方治療ではひとつの症状だけをみるのではなく、その人全体をみます。その診方は、 1.望診(特に舌診は重要)2.聞診3.問診4.切診5.脈診6.腹診、がありこれらのすべてを総合して処方を決めます。 同じ病気で同じような症状でも体質は一人ひとり違います。そのときの病情(病気の状態)をきめ細かく観察しその人にもっとも適した治療を行います。すべての病気で漢方薬を処方するわけではありません。 西洋学的な生化学検査をしても全く異常をしめさず、しかしどうにも説明のつかない症状があるという場合、漢方の考え方は有効です。
 たとえば秋から冬にかけ風邪を引きやすくなおりにくい場合、その人の夏の生活を聞いてみると、海水浴、クーラー、冷たいものの飲みすぎなど、 体を過度に冷やしていたことが多くみうけられます。このような場合からだが冷えて代謝が悪くなっていると考え、体を温める処方をします。 漢方(東洋医学)では、「生体は自然界との調和で恒常性を維持している。」と考えます。
 

漢方薬の無駄をなくす

 基本的に漢方薬は「元気で楽しく健康に生活していただくため」処方するものです。 漢方薬が体に良いといっても、処方された薬の味や臭いが苦手でのめないかたもいらっしゃいます。無理をして服用すると 体に負担がかかることもあります。のめないことを医師に伝えられなくて漢方薬だけが引き出しにたまっているというかたもあるかもしれません。 これは医療費の無駄遣いだけでなく、生薬という貴重な天然資源物(自然物)を無駄にすることにもなります。 何よりも薬をのまないことで自分の体の回復が遅くなるという、時間の無駄でもあります。のめないときは遠慮なく医師に申し出てください。祖先の努力と知恵で完成した漢方薬を有効に使用しましょう。